過去に別の記事で、ビタミンDやカルシウムのサプリメントが骨粗しょう症の予防にあまり効果がないという論文を紹介したことがあるのですが。
それ以来、骨粗しょう症について質問をいただくことが増えたので、骨粗しょう症のメカニズムや、なぜ「筋トレ」が効果的なのか?について、お話ししたいと思います。
高齢者の骨粗鬆症予防にサプリメントは有効なのか?
※ 今回の内容はあくまで一般的な骨粗鬆症のお話であり、診断や治療についてはお近くの整形外科を受診してください
骨リモデリング
骨もじつは新陳代謝をしていまして、古い骨を破骨細胞と呼ばれる細胞が破壊し、骨芽細胞という新しい骨を作る細胞で補充されていきます。

このプロセスは3か月周期で行われるといわれており、常に骨を修復して強度を保っています。
破骨細胞が骨を破壊する期間は数週間といわれていますが、骨を形成していくのには数か月かかるといわれています。
つまり、このバランスが何らかの理由で崩れると骨粗鬆症になるといわれています。

女性の場合は閉経後の女性ホルモンの不足や、カルシウム、ビタミンD、Kなどの不足によっても減少するといわれていますし、ステロイド薬の使用なども原因になりうるようです。
また、今回のテーマである運動不足によって骨量が低下するケースもあります。
骨≠カルシウム
骨はカルシウムで出来ていると思われがちですが、カルシウムだけではただ硬いだけの骨になってしまいます。
例えるなら鉄筋を入れないコンクリートの塊です。
つまりカルシウムだけでは固くて衝撃に弱くなってしまうため、柔軟性を持たせるために骨の重量の20%程度、体積で50%程度がコラーゲンで出来ているのです。
特に女性は注意が必要
特に女性は男性よりも筋力が低く、男性よりも長寿であることから骨粗鬆症のリスクが高いといわれています。
(もともとの筋力が弱く、加齢によって筋力低下が起こると歩けなくなるリスクが高くなるため。また、長寿であることから寝たきりになるリスクが高くなる傾向も指摘されています)
骨粗しょう症での骨折は大腿骨(大腿骨頭)と椎骨に多い
骨粗しょう症で多い骨折は大腿骨(太ももの骨)と椎体(背骨)といわれています。
どちらも大きな力がかかるため、骨粗しょう症の影響が出やすいようです。
またこうした箇所の骨折は、QOLの低下に直結するため注意が必要です。
骨粗しょう症予防には筋トレが重要
筋肉の量と骨密度には相関があることが、疫学調査で明らかになっています。
簡単な理由ですが、筋肉は骨に付着していて、筋肉量と筋力は比例するのでより強い力に耐えられるように骨も強くなる必要があるからです。
ドイツの医学者・ウォルフが提唱した「骨はそれに加わる力に抵抗するのに最も適した構造を発達させる(ウォルフの法則)」というのはとても端的にこの事実を言い表しており、他のさまざまな研究からも『筋力を鍛えることで骨密度があがる』ことはわかっています。
残念ながらビタミンDやカルシウム、コラーゲンなどのサプリメントだけで骨粗しょう症を改善することは難しく、骨を強くする刺激(筋トレ)を第一に考えることが重要です。
骨粗しょう症の骨折で多い、椎骨や大腿骨と関係が深い筋肉は脊柱起立筋や大腿四頭筋などです。

これらの筋肉を鍛えることが骨粗しょう症の予防として重要になります。
レッグプレスやアブドミナルが効果的

骨粗しょう症予防には、出来るだけ若い時期から筋トレを行うことが重要です。
(骨粗しょう症になった段階から筋トレを行うのは難しいからです)
おすすめの種目は、フリーウェイトならバーベルスクワット。
マシントレーニングならレッグプレスやアブドミナルがおすすめです。
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手技療法機器、リハビリ・トレーニング機器の製造販売会社の代表を務める。
手に負った深刻な怪我を、湿潤療法(ウェットドレッシング)という新しい創傷治療法で、小島医師に治癒してもらった経験から関係が深まる。
その後、「筋肉ドクター」から独自の運動療法理論や筋トレに関する薫陶を受け、YATAGARASUの開発・製造のパートナーとなる。
2019年より、WCEM(WORLD CONFERENCE ON EXERCISE MEDICINE:世界運動療法学会)外部委員を務めています。